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人形劇を子ども達が演じる魅力

清水正年)

  人形劇を指導している「人形劇のプロ」である私たちが、子ども達の発表を観て「負けた!」と思うことがよくあります。それは、理屈でなくダイレクトに「気持ち」が伝わってきたり、発想が本当に自由で豊かで柔軟性に富んでいるということかなあ、と思います。
  大人を指導する場合、まずストーリーを考えたり、絵本を脚色したりして「台本」を作ります。そして登場人物を手分けして作り始めます。子ども(特に低学年)の場合、まず各自好きな人形を作ってその登場人物で劇あそびをしながらストーリーを展開してく方が有効的だと思います。
  「この取り合わせでどないすんねん!?」というくらいバラエティーに富んだ人形ができた時の方が出来上がった劇も面白かったように思います。たいてい人間あり動物あり、海の生き物ありという感じなのですが、あるとき、四角いウレタンをひな壇状に切っただけで「恐怖の階段」という男の子がいました。「他の登場人物とどうからむねん?」と思っていたら、その子は「ここで、みんなの行く手に恐怖の階段が現れるねん。ほんで一人ずつのぼって『ナゾナゾ大王』のなぞなぞに答えな先に進まれへんねん」と言って、ある男の子が作っていた「サンタのおじいさん」を無理やり「ナゾナゾ大王」に仕立て上げました。その男の子も躊躇なく「ナゾナゾ大王」になりすまし、難しいなぞなぞを連発しました。
  この様に、うまく転がり出すと全員が一つになって劇づくりに没頭していきます。たとえあの男の子が「いやこれはサンタのおじいさんだ」と言い張ったとしても、それならそれで「ナゾナゾサンタ大王」になっていたかも知れないし、「サンタのおじいさんの家にようこそ。みんなにプレゼントをあげよう」となっていたかも知れないし、それこそ大人が思いもよらぬ展開になっていってたでしょう。
  これだから大人はかないません。
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